言の葉なないろ

伝える言葉の練習です

傘がない

明け方から強い雨が降り続いていて

台風19号の災難も記憶に新しく

日本中の山間や扇状地の川の増水が気にかかる

ここ都心(に近いだけ)の川の増水は知れている

知れているけど

堤防の縁に届かんとする水の勢いには

やはり少しの恐ろしさを感じる

通勤途中、日々、愛用のクロスバイクからみる川の水

美しくはないが、鯉や亀が見えるほどの透明度

今日は茶色だった

違う川を見ているようだった

いつものあの魚や亀たちはこんなとき

どこへゆくのだろう

彼らのなかで

あそこは安全だぜ!

とか

ここはどんなときも流れが緩いポイントなのだ!

とか決まっている隠れ場所があるのだろうか

彼らには傘がない

それにしてもこの色よ

いったい上流から何を巻き込んで来たのか

調べたところ意外にも水源は近くにあった

なんと5キロほど遡ったところの

公園付きのため池であった

池底か、グラウンドの土砂が流れてきた

といったところだろうか

小さき、言葉なき者たちと

私たち人間双方の無事を祈る

≪おしまい≫